にゃおん、と鳴いてみよう
あーあ。
ママの色が、ただの茶色になっちゃった。
もうあたしの色でもない。つまんないの。
プイと顔をそむけると、ミネちゃんが笑う。
「なあに、さっきまで興味深々だったのに。面白いネコちゃん」
だって、ママの色が見たかったのに。
また今度見せてよ、黒と白と茶色。
おねだりするように見上げると、ミネちゃんはにっこり笑う。
「コーヒー好きなネコちゃんなんて珍しいねー。……そうだ! ここにいる間、あなたの名前モカちゃんにしよう。ね、いいよね?」
あたしはチビよ。
なあに、モカって。
「決まり! モカちゃん。しばらくはここにいようね。元気になるまで」
なによ、勝手に決めないでよ。
あたしはママを探しに行かなきゃいけないのに。
だけど、今はあたしも疲れちゃってるし。
声も出ないから呼ぶこともできないから、その間はここにいてもいいかな。
それに、あんなに探したのに見つからなかったんだから、ママには会えないかもしれない。
そう思っただけで、あの夜の心細さが思い出されて、暖かい部屋から出る勇気がしぼんでしまう。
……そうね。
もう一度頑張るぞうって思えるまでは、ここにいてもいいかも。
ミネちゃんは悪い人じゃなさそうだし。
「じゃあ、これつけてようね」
そう言ってミネちゃんは赤いリボンをとりだした。
「黒ネコは赤いリボン。定番よね」
良く分からないことを言って、満足そうにあたしの首に巻きつけた。
ああん、邪魔よう。とってよう。
まとわりつく感じが気になって、前足でガリガリひっかいていると、ミネちゃんは鏡を持ってきた。