にゃおん、と鳴いてみよう
そんな風にミネちゃんとの暮らしにも慣れてきたある日のこと。
「近くの病院調べてみるね」
ミネちゃんは、あたしがしゃべらないことを心配しているみたいだ。
パソコンっていうキカイをいじり出したので、あたしはミネちゃんのお尻のあたりに、すり寄るようにして丸くなる。
あったかい。
ママと違うけど、ママみたいにあったかくて、なんだか安心しちゃう。
そうして、ウトウトしてふと目を開けると、上の方から寝息が聞こえる。
幸せそうな顔して、ミネちゃんが寝ちゃってる。
起きないと風邪ひくよー。
そう伝えたいけど、声が上手く出ないから。爪を引っ込めて前足でミネちゃんの足の裏を小さくこする。
「うふふぅ。くすぐったい」
そう言うミネちゃんの口からは、ちょっとヨダレが出てる。
うもう、寝ぼけてるな。
ちゃんと起きてよ、ミネちゃん。
「むにゅう」
再び足をこすると、今度は変な声が聞こえた。
その声がおかしくって笑いたかったのに、やっぱり声は出なくって。
ミネちゃんの穏やかな寝顔を見ていたらなんでか泣きたくなった。
あたし、ミネちゃん好きかも。
でもいつか、お別れするんだから、好きになっちゃダメよう。
だから、プイってそっぽを向いたら、窓からお月さまがこっちを見てた。
なによ、あたしの方ばっかり見てないでママを探してよ、お月さま。
そうしたら、あたし帰れるんだから。
あたしのおうちに、戻れるんだから。