にゃおん、と鳴いてみよう

「うううう」


ん? 近くで唸り声がする。

あたしは、ミネちゃんが気になり過ぎて、前を確認できてなかったみたい。
正面を見ると、さっきまで遠くでお散歩してた犬が、すっごく近くにいた。


「わんっ!」


大きな声で吠えられて、あたしはビックリしちゃった。一目散に後ろに走って、繁みの中に忍び込んだ。


「あ、モカちゃん!」


葉っぱがチクチク体に刺さる。思いっきり突っ込んじゃったから、ちょっとケガしたかも。枝が刺さって痛いよう。

でもまだ犬が吠えてる。ヤダヤダ、黙ってよ。吠えられるのは嫌い。


「モカちゃーん。どこに行ったの?」


ミネちゃんがあたしを探してる。
そっちじゃないよ。こっちだよ。

あたしが逃げ込んだ繁みとは違う方向を捜し始めるミネちゃん。
ここだよーって出て行きたいけど、犬に吠えられるのは嫌だしなぁ。


「モカちゃーん」


 辺りを探し回るミネちゃんは、公園の出口の方まで向かって行っちゃった。何とか繁みを抜けて、草の陰に隠れながら後を追いかけた。

チリンチリン

そんな音が、あたしの耳に飛び込んできた。

慌てて道路の方を見ると、自転車っていうニンゲンの乗り物が遠くから走ってくる。

あ、ミネちゃん。そっちに出ていったらぶつかっちゃうよう。

急いで追いかけようとしたけど、ミネちゃんはもう道路に出ようとしていた。

きょろきょろと、あたしを探して下ばかりを見回してるから、自転車には気付いていないのかも。


ダメだよ。ミネちゃん、危ないよ!
あたしはこっち。こっちだよー!!


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