にゃおん、と鳴いてみよう

前回のようにカゴに入れられていて周りは全然見えなかったけど、お外の匂いがしたから、あたしは外に出たくってカゴの中をガリガリやった。

でもミネちゃんは出してもくれないし、何にも言わなかった。

おかしいなぁ。
この間は出してくれたのに。そうでなくても、「また後でね」って言ってくれると思うのに。


「にゃおん」


何度呼んでも、ミネちゃんは一言も話さない。今度はミネちゃんが声が出なくなったわけじゃないよね?


 病院に入ってようやくカゴから出してもらえた時、ミネちゃんに文句を言おうと思ったのに、ミネちゃんの瞳は潤んでいて、あたしはなんにも言えなくなった。


「喉はもう大丈夫そうですね。声も出たんだね。良かったね、モカちゃん」


おじさん先生がにっこり笑う。


「にゃおん」


ありがとう。お陰さまで。

ほら、ちゃんとお返事できるよー! って思ってミネちゃんを振りかえったら、ミネちゃんの目からポツリと一つ涙がこぼれ落ちた。

どうしたの、ミネちゃん!

心配でニャーニャー泣いてたら、白い服を着たおねえさんがあたしの体を掴んで、いっぱい並んでいる病院のケージの一つにいれた。

……あれ。どうして?


「にゃー」


なんであたしここに入るの?

訳が分からず鳴き続けるあたしに、下のケージのネコがうるさいよっていう。
ごめんね。でもでも、あたし、訳がわからないよ。
< 36 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop