にゃおん、と鳴いてみよう
前回のようにカゴに入れられていて周りは全然見えなかったけど、お外の匂いがしたから、あたしは外に出たくってカゴの中をガリガリやった。
でもミネちゃんは出してもくれないし、何にも言わなかった。
おかしいなぁ。
この間は出してくれたのに。そうでなくても、「また後でね」って言ってくれると思うのに。
「にゃおん」
何度呼んでも、ミネちゃんは一言も話さない。今度はミネちゃんが声が出なくなったわけじゃないよね?
病院に入ってようやくカゴから出してもらえた時、ミネちゃんに文句を言おうと思ったのに、ミネちゃんの瞳は潤んでいて、あたしはなんにも言えなくなった。
「喉はもう大丈夫そうですね。声も出たんだね。良かったね、モカちゃん」
おじさん先生がにっこり笑う。
「にゃおん」
ありがとう。お陰さまで。
ほら、ちゃんとお返事できるよー! って思ってミネちゃんを振りかえったら、ミネちゃんの目からポツリと一つ涙がこぼれ落ちた。
どうしたの、ミネちゃん!
心配でニャーニャー泣いてたら、白い服を着たおねえさんがあたしの体を掴んで、いっぱい並んでいる病院のケージの一つにいれた。
……あれ。どうして?
「にゃー」
なんであたしここに入るの?
訳が分からず鳴き続けるあたしに、下のケージのネコがうるさいよっていう。
ごめんね。でもでも、あたし、訳がわからないよ。