にゃおん、と鳴いてみよう
助けを求めてミネちゃんを見たら、先生に向かってぺこりと頭を下げていた。


「よろしくお願いします」

「はい。ちゃんとお預かりしますよ」


……あ、そういうこと?

分かってしまった。
ミネちゃん、あたしをここに置いて行く気だ。

あたし、いらなくなっちゃったんだ。

ミネちゃんは涙目のまま、あたしの方へやってきた。


「ごめんね。モカちゃん。ごめんね?」


その後も、ミネちゃんは色々話してたけれど、あたしはもう聞いてなかった。

だって、捨てるんでしょ?
だったら何もかもいいわけだよ。意味なんてない。

ママも昔、ニンゲンに捨てられたって言ってたよね。
こんな気持ちだった?

見失うとかより、もっと辛くて、胸が痛い。

大好きだったのに、こんなにあっさり離れることができるなんて。

もう声は出るようになったのに、何も話したくなかった。

背中を見せて歩いて行くミネちゃんに、文句の一つも言いたかったのに言えなかった。


「……みゅー」


ただただ、あふれてくるのは涙。足元にぽつぽつとこぼれたそれは、あたしの爪を濡らしていく。

でも悔しいから、お別れが寂しいなんて言わないんだから。

ミネちゃんのバカって言う。

バカ、バカ、バカ、酷いよ。

あたし、ミネちゃんのこと、もう大好きになっちゃったのに。


――置いてくなんて酷いよう。


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