にゃおん、と鳴いてみよう
「ねー、モカちゃん!」
うるさいよう。
あたし、もうイヤなんだもん。
置いて行かれるのはまっぴらなんだから。
ママ、お姉ちゃん達、そしてミネちゃん。
みんな、大好きだったのに、あたしのこと置いていった。
もうイヤだよ。
あたしを起こすなら、呼ぶなら、もう二度と置いて行ったりしないでよ。
「おーきーてー!」
もう、うるさいってばー。
「にゃー!」
あまりのしつこさに叫びながら目を開けると、目の前には本当にミネちゃんがいた。
「やっと起きたー!」
ガッツポーズまでして、あたしににこにこ笑いかける。
なあに、このあっけらかんとした態度。
あたしのこと、捨てたくせに。もっと、悲しそうな顔でごめんねとか言いなよ。
だけどミネちゃんの口からこぼれたのは、全然違う言葉だった。
「モカちゃん、迎えに来たよ」
え? 今なんて言ったの?
迎えにって、何?
白い服を着たおねえさんが、あたしをケージからだす。
ミネちゃんはそのままあたしを受け取って、何のためらいもなくギューって抱きしめた。
ふんわり、ミネちゃんから香る『こおひぃ』の匂い。
なんだかすごく懐かしい。ママの色の『こおひぃ』の香り。