にゃおん、と鳴いてみよう
突然の別れ
平和な日々が終わったのは、突然だった。
いつものように主さんがつけるテレビに見入っていたあたしの耳に、たくさんのニンゲンの足音がとびこんできた。
水色のつながった服を着た人たちが、『ゴハン屋敷』に入り込んで、驚く主さんをなかば捕まえるようにして連れて行った。
その中には、あたしたちを捕まえようと網をもっているニンゲンもいたから、みんな、家の中にあるたくさんのモノの陰に隠れたり、窓から逃げ出したりした。
ママがあたしたちとニンゲンの間にはいって、早く逃げなさいって叫んだのと同時に、お姉ちゃんたちが駆け出し、あたしはその後を必死に追いかけた。
チビ! こっちよ!!
お姉ちゃんの叫び声が、だんだん遠くなる。
あたしはもともとみんなより足が遅い。気が付いたら、茂みに入り込んだお姉ちゃんたちを見失っていた。
耳を澄まして匂いを嗅いで、一生懸命追いかけたつもりだったんだけど、周りは見たことのない建物ばかり。
もう追いかけてくるニンゲンがいないのを確認してから、足を止めた。
どうしよう。ひとりぼっちだ。
ドキドキする心臓の音を聞きながら、電信柱の隅で荒れた呼吸を整える。
一体、何があったの?
あのニンゲンたち何なの?
一緒に住んでたシロさん家族の茶丸ちゃんが、網の中で悲鳴をあげてた。
大丈夫だったかな。助けもせずに逃げてしまった。
あの手が、あたしの方に先に向かってきてたら、間違いなくあたしが捕まってたんだ。
そう思うと、怖くって堪らなくて、勝手に体が震えてくる。