にゃおん、と鳴いてみよう

お姉ちゃんたちは先を行っていたんだから間違いなく逃げられてはいると思うけど、ママは大丈夫だったかな。
うちで一番すばしっこいもん。大丈夫だよね、ちゃんと逃げてるよね。

あたしは辺りを見回してみた。

大きな通りが見渡せる。車がいっぱい走っていて、ニンゲンがお話ししながら歩いている。みんな、隣の人と話すのや前を見るのに夢中で、あたしがいることには気づいていないみたい。

『ゴハン屋敷』の周りと違って、大きな建物がたくさんの知らない場所だ。

ママも、お姉ちゃんたちもいない。
どうしよう、どうしよう。

青かった空の色も、変わってきている。もうすぐ暗くなっちゃう。
そしたら寒くなる。あたし今日、どこで寝ればいいの?

どうしよう、どうしよう。
でも困っていても何にもならない。仕方なく、後ろを向いてとぼとぼと歩きだした。


……あたしの勘ではこっちよ。
高い生け垣を抜け、誰かの家の庭をとおり、別の通りに出る。
通ったような気もするけど、あいまいすぎて分からない。

きょろきょろ見渡して、匂いも嗅いでみても、知った匂いとは出会わない。

ここ、どこだろう。ママ、どこにいるんだろう。

あっちの道、こっちの道。歩いても歩いても、見慣れたところには辿りつかない。暗くなっても見えるけど、お腹がすいたのはつらいなぁ。

たまに、『ゴハン屋敷』に食べ物が無い日もあって、そんなときママはピカピカしたお店の路地裏によく行った。
そこには、食べれるものが一杯捨ててあったりするの。

まだ自分一人でそれを探した事はないけど、今は誰もいないんだもん、一人でやってみよう。
< 6 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop