にゃおん、と鳴いてみよう
暗くなってきた通りには、三つのピカピカ目玉があっちとこっちで光っている。
あれは信号、前にママが教えてくれた。
ニンゲンのルールでは、青い時しか渡れないんだって。
その向こうにはピカピカしたお店がある。こういうお店の後ろの方にあるんだよ。
得意げに狭い道を入っていっても、バケツも何にもない。
あれれ、残念。
じゃあ次の店に行こう!
何件も何件も、ピカピカの明かりのついたお店の周りをぐるぐるまわった。
ママと来た時は、青いバケツがあって、その中に食べ物があったりしたんだけど、この辺りではあんまりないみたい。
でも頑張らなきゃ。きっとママもお姉ちゃんたちも、お腹をすかせてるわ。
待っててね、あたし、探すから。
そうして、真っ暗になるまで探し回って、ようやく薄汚れた青いバケツを見つけた。
蓋を頭で押しあげて、体重をかけたらバケツがゴロンと転がる。
小さいバケツで良かった。
もうちょっと大きかったら、中に落ちちゃったかも知れないわ。
もわっとした匂いと共に、色んな食べ物が出てくる。スパゲティとか、ごはんとか、色々混ざり過ぎてて、どれがどれだかわからないほど。
あたしは、その場で食べれそうなものを口に入れながら、持って歩けそうなものを探した。
頭をバケツに突っ込んで見つけ出したのは、ひとかたまりのパンだった。
これなら、持って行ってあげれる。
ママやお姉ちゃんが、きっと喜ぶ。
そんな姿を想像して、あたしはパンを口にくわえなおして歩き出した。