にゃおん、と鳴いてみよう
 * * *

 あれから、何日経ったんだろう。
何度か力尽きて眠ってしまったから、お月さまと出会った回数は分からなくなっちゃった。

どうしても我慢できなくって、少しずつ食べていたパンも、もうほんの一かけらしか残っていない。

でもようやく見慣れた場所を見つけて、記憶を頼りに『ゴハン屋敷』に向かった。

ママへのお土産が、一かけらのパンってのは寂しいかしら。
お曲がれば姉ちゃんたちの分も考えたら、全然足りないなぁ。

だけど早く会いたいから、会ってから考えよう。

疲れ切って、体が重たかったけれど、あたしは先を急いだ。
この角を『ゴハン屋敷』があるはず。

やっと帰れたよ、にゃおん!


「にゃ……?」


だけど、辿りついた『ゴハン屋敷』は今までと違っていた。
なんだかモノが全然ないし、何よりネコの気配がしない。

床下から入り込んで、床板が一か所壊れている廊下から顔を出す。
あたしたちネコの出入り口。でも、いつもはネコでいっぱいのココにも誰もいない。


「にゃー」

ママ?

「にゃー」

誰かいないのー、と声をかけてみたけれど、誰からもお返事はない。
主さんもいないみたい。

しばらくここで待ってみようかなぁ。
すごく小さくなっちゃったパンを転がし、あたしは顎を何度も開け閉めする。
疲れたし、ちょっと休もう。

しゃがみ込んでいたら、玄関の方からガサガサと物音がした。

小さくなって息をひそめていると、聞こえてくるのはニンゲンの声。
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