廃想集 『カワセミ啼話』
羽根が見えたんだ。
「ねぇ、あっちのお花が綺麗よっ」
って、駆け出した背中に真っ白でふわふわの大きな翼が、ちょうど肩甲骨あたりから、まだ羽根を閉じたまんまで綺麗に並んでた。
(ああ……、そうだったのか)
僕は君に沢山のものを貰った。
僕は何をしてあげられたかな?
僕は何をしてあげれば、良かったのかな?
沢山、考えたけど答えはないね。
いつも、いつだってそんなもんだけど。
公園の噴水に反射して、水色に輝く翼は、その日の澄んだ青空より綺麗で。
ぽつんと浮かんだ雲は、その影を僕に落とす。
夕陽に映ったオレンジ色の翼は何よりも暖かかった。
その温度差に僕の手が冷たいことを思い出す。