廃想集 『カワセミ啼話』
手のひらの傷跡は
君を思い出させるだけでも
充分なのに。
あの時の痛みさえも鮮明に
蘇らせて。
まるで
イタズラに嫌がらせをする
無邪気な子供のように
僕を絶望の淵へといざなう。
「楽しいかい?」
と問うと
「楽しいよ」
と、さも楽しくは無さそうに答えるのに。
それを止めることはない。
止めさせる術も知らない。
知らぬ間に僕は
痛みに身を任せる。
その術だけを身に付けていた。
『さよなら』の言葉はいつ使えばいいのだろう。
それさえも忘れた
日曜の朝。
タマゴとハムは
もういらない。