だから、俺にしとけよ。
*第1章*
隠している気持ち
「京ちゃんおはよっ!」
玄関から出てきた京ちゃんこと持田京介(もちだ きょうすけ)に、すぐに笑顔で挨拶をする。
京ちゃんとは家が隣の幼なじみで、生まれた時からの付き合いなんだ。
「ネクタイおかしい」
「えっ?」
京ちゃんは私の目の前まで来て、手を伸ばしてネクタイを結び直してくれる。
自然と体が近くなりドキドキとうるさくなる心臓。
それを目をつぶって抑える。
「できた。
ちゃんと結べるようにしときなよ」
キュッと締めてから、優しく微笑む。
あぁ、幸せだな。
京ちゃんの笑顔に私の頬も緩む。
そして2人並んで歩き出した。
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