だから、俺にしとけよ。
以前、京ちゃんが好きと言って紹介してほしいと言ってきた人。
もう京ちゃんと知り合ってるじゃん……。
ひろちゃんが京ちゃんの腕を掴んで、人気のないところに引っ張っていく。
京ちゃんはそのまま抵抗もせずにすんなり引っ張られている。
何で京ちゃんは他の子ばかりなんだろう。
何で私はいつもこんな場面ばかりを目撃しちゃうんだろう。
目頭が熱くなる。
私は何で毎回泣けちゃうんだろう。
「伊都ちゃん」
私の異変に気づいて、入谷くんは私を引っ張って、にぎわっている廊下から連れ出してくれる。
中庭に来て私をベンチに座らせてくれて、入谷くんはその前にしゃがむ。
私の両手をとって、下から顔を覗き込んでくれる。
「俺なら、そんな悲しい顔させないよ?」
入谷くんの声がじんわりと胸に沁み込む。
確かに入谷くんはモテるのに、他の女子と2人きりで消えていくところを見たことがない。