だから、俺にしとけよ。



京ちゃん……?

見上げると入谷くんを真っ直ぐに見つめている。


入谷くんはため息をつきながら立ち上がり、制服についた土を払う。




「そういうけどさ、あんたよりマシだと思うよ?
さっきうちのクラスのやつといるの見たのに、今から別の女の子のとこに行こうとしてるって」



はっと笑う入谷くんも、いつもとは違う。


さっきのからかってるとか楽しんでるとかじゃない。

バカにしてるっていうか、軽蔑してるっていうか。


とにかくそんな笑いだった。




「それで今度は伊都ちゃん見つけて、他の男といるのが許せないって感じ?
そっちの方が不誠実じゃん。
伊都ちゃんに触れていいような人じゃない」



入谷くんの真剣味を帯びた言葉に何も言うことができない。

京ちゃんのこと悪く言わないで、とか。



入谷くんは私のことを思って言ってくれてるって分かるから、何も言えないんだ。



京ちゃんが私の手をしっかりと握り入谷くんに背を向ける。



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