だから、俺にしとけよ。
「こいつは俺のだから、手出すなよ」
一度立ち止まって、それだけ言うと再び歩き出した。
引っ張られながら入谷くんに振り返ると、切なげに笑って手を振ってくれた。
追いかけてくることはない。
入谷くんはいつもそうだ。
なんだかんだ言いながら、無理やりなことはしない。
胸がぎゅっと締め付けられるのを感じながら、京ちゃんと手を繋いで歩いていた。
「伊都は何考えてんだよ。
あんなやつと一緒にいて、しかもすごい距離近いし」
帰り道はお説教タイム。
それでも手は繋がれたままのことに、少し嬉しくなる。
けど、心の中はモヤモヤしている。
「京ちゃんは良かったの?
約束あったんじゃ……」
脳裏に浮かぶのは以前見た先輩。
何となくあの先輩との約束な気がしてる。