だから、俺にしとけよ。
「そろそろ、俺のこと考えてほしい」
「……え?」
「一昨日から俺は少し期待しちゃってる。
焦らしたくないけど、今しかないんじゃないかって思ってるから」
それは入谷くんの気持ちに応えるということ?
「幼なじみから気持ちが動いてるみたいだし、だったら今がチャンスだよね?
だから俺のことを真剣に考えて」
「……ん」
短く返事をすると私の肩に手を回し、強い力で引っ張られる。
そしてそのまま入谷くんの腕の中に閉じ込められる。
「俺にしときなよ。
絶対泣かせないから」
強く抱きしめられて、耳元でそれだけ言うとすぐに体を離す。
「じゃあね」
そう言って来た道を戻って行った。
その背中を見つめながら、感情が複雑に絡み合うのを感じた。