だから、俺にしとけよ。
こういう時だけ、すぐに嘘の言葉が思いつく。
咄嗟に出たセリフはそこまでおかしくないはず。
ヘラヘラしている私に、呆れたような顔をする京ちゃん。
「スリッパ借りてくるから待ってろ」
そう言って京ちゃんは走ってスリッパを借りて来てくれた。
それを履いて教室へ行く。
「あ、伊都おはよー。って何でスリッパ?」
緑色のスリッパは少し目立つ。
この学校の上靴は普通の屋内シューズみたいなものだから。
「ちょっと、ね……」
「誰にやられたの?」
「……分かんない」
察してくれた歩美ちゃんが真剣な表情で聞いてくるけど、誰だか見当もつかない。
昨日までは普通だったから。