だから、俺にしとけよ。




昇降口で靴を履きかえて歩き出す。

と、急に志貴が私の手を握る。



「ん?」


「まだ好きだったり……」


「しないよ。
私が一途なの知ってるでしょ?」


「知ってるからこそまだ……」


「バカだなぁ」



私がどれだけ志貴のこと好きなのか、全然分かってないじゃん。


自分でも知らなかったいろんな私を志貴は引き出してくれたんだよ?




「私が志貴に冷たかったの知ってるじゃん。
京ちゃんのことまだ好きだったら全力で、この手を振り払ってるからね」


「……それもそうだね」


「そうだよ」


「もう伊都ほんと好き」


「さぁー行こう!」



志貴の手を引っ張ってさっさと歩く。


不意打ちの好きは心臓に悪いから、本当に。




< 319 / 370 >

この作品をシェア

pagetop