悪魔なCEOとワガママお嬢様
それからは誰も口を開く事も無く、車は流れる様に閑静な住宅街に入っていった。




「着きました」

運転手の言葉と共に橘さんが車を降り、ドアを開けてくれた。

「あ…ありがとう…ございます」

私が使い慣れない敬語で話すとまた男にフッと鼻で笑われた。

「さっそく敬語を使うなんていい心掛けだな」

(べ、別にあんたに言われたからじゃないけどねっ)

指摘に顔を赤くしながら車から降り、建物を見上げた。

(うわぁ……なんて言うか…すっごいレトロなお屋敷だ…)

見上げた先には良く言えばレトロ、悪く言えばお化けでも出そうな雰囲気を醸し出した洋館が鎮座していた。
建物自体は年季を感じるけれど、大切にされているのはなんとなく分かる。
門をくぐってから今いる所にたどり着くまでのお庭は綺麗に手入れされていたし…



「古いとか思ってんだろ」

"まぁ、古いのは事実だけどな"って言いながらいつの間にか車を降りて男が私の隣に立っていた。



「ずっとここに住んでるの?」


「いや、元々は祖父母の屋敷だったが俺が会社の代表になる時に譲ってくれたんだ」



「…ふーん」

(元はお祖父ちゃん、お祖母ちゃんのお家…だからこんなにもレトロなのね)


「おい、いつまでそうしてるつもりだ?さっさと中にはいるぞ」

そう言うとスタスタと玄関扉に向かって歩いて行ってしまう。

「あっ!ちょっと待っ………あぁー!!!!!」

(色んな事があってすっかり忘れてたけど…
私のトランクは?!)


「ねぁ!!私の荷物は??!」

男が玄関の前でこっちを振り向くと面倒くさそうに車の方を指差した。


< 13 / 20 >

この作品をシェア

pagetop