悪魔なCEOとワガママお嬢様
***

「よっと!ここが今日からマリアの部屋な」

トランクを降ろし、手をグーパーしながらそう言う男を横目に、部屋を見回した。


綺麗にベッドメイクが施された真っ白なダブルベッドに飾り気のない赤茶のソファーとローテーブルがあるの部屋だけど余計な物がない分、洗練された雰囲気が漂っている。

「気に入ったか?」

何も言わない私を不思議に思ったのか顔を覗き込んできた。


「なっ?!ち、近いから!!」


いきなりの至近距離に驚いて手で思わず顔を押しやる…けど、すぐにその手は掴まれた。

「気に入ったかって聞いたのに答えないからだろ」


(そ、そうだとしても!いきなりそんなに近づかないでよ…)


掴まれた手も、顔も…熱い…


「気に入ったから…手……離してよ」

私の言葉でようやく手を掴んだままだと気付いたのか"悪りぃ…"と言いながらパッと離した。


「…………」


(私どうしたんだろう…今日初めて会ったのに…悪魔みたいに嫌な男なのに…手離されてガッカリしてる…?)


「荷物は後でゆっくり片付ければいいから
幸子さん待ってるだろうし、とりあえず着替えろよ、終わったら下行くぞ」


そう言い部屋を出て行く後ろ姿を見つめながらなんだか私ばっかりあたふたしている様で悔しい…なんて思ってしまう…。





「着替えないのか?」


突然聞こえたその声に知らない間に俯いていた顔を上げると男がドアの所に立ったまま私を不思議そうに見つめていた。


(待っててくれるの…?…………まさかね)



沈みかけていた気持ちが一気に浮上する様な気がしたけれど気のせいだと振り切る様に頭を振り、"着替える!"と言った。
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