悪魔なCEOとワガママお嬢様
飛行機を降り、入国ゲートをくぐった所で辺りを見回す。
出発前に母から迎えに行くと連絡が入っていたからだ。
「マリア!」
声のする方を見ると美しい着物に身を包んだ母がこちらに向かってブンブンと手を振っていた。
「ママ!」
トランクを引きながら母に駆け寄り抱きしめられると懐かしい匂いがした。
「卒業おめでとう!随分と大人になっちゃって…ママ寂しかったのよ?さぁ顔を見せて頂戴」
久しぶりに会った母は私の記憶する日本語が覚束無い母とは違い驚く程流暢に話す。
「驚いた!ママ日本語うまくなってるわ」
「そりゃあ10年以上も日本にいるんですもの!うふふ 今じゃマリアより上手よ」
父が日本人という事もあり私も日本語が話せないわけじゃない。小学生までは日本にいた訳だし…ただ日本を離れてからの6年間は英語以外使う必要もなかったから私の日本語は小学生レベルと言ってもいい。
「日常会話なら問題ないもの!それよりどうして着物なの?」
「えっ…?えーと…パパ…そうよ!パパがね、せっかくマリアが日本に帰ってくるんだし卒業祝いも兼ねて料亭にでも食べに行こうって言い出したのよ」
「そうなの…?だけどママ…なんだか様子が変だわ」
「そ…そう?そんな事ないと思うんだけど…それより車を待たせてあるから行きましょ!マリアのお着物も用意してあるから!」
(ママなんだか焦ってるみたい…予約の時間ギリギリなのかしら…)
空港の入口近くに停車している車にママが近づくと運転手が降りてきて私の持っていたトランクを車の後ろに入れてくれた。
ママと車に乗り走り出した景色を見ていると帰ってきたと実感する…私の隣でママがあれこれ話していたけど私はぼーっと窓の外を見ていた。