悪魔なCEOとワガママお嬢様
***


首都高を走る車の中ー…
手元の資料に目を通していると
助手席に座る秘書の橘(たちばな)が口を開いた。

「CEO 次は料亭磯松(いそまつ)でよろしいですか?」

「ああ」

「しかし…本当によろしいので?」

資料から顔を上げ橘を見て眉を寄せる

「なんだ?行き先はそこで良いと言っているだろう」

「そうではなく、今回charloが打診してきた会食というのは…」

(ああ その事か…)

「お前の考える通り…見合いだろうな」

「分かっていらしたのですね その…こういったお話はいつもお断りされていたものですから今回も当然そうなされると思っていたもので…」

「仕方ないだろう…今朝charloの西園寺会長 自ら俺宛に連絡があったんだから」

そうー遡る事一ヶ月前、大手家具メーカーであるcharloから業務提携の話が舞い込んだのだ。
しかも会長である 西園寺 誠 直々に。

charloと言えば事業を全国展開しており年商は数百億の超大企業…

こちらも全世界で知らない者はいないホテル経営のトップに鎮座する東条グループ 年商は数千億といったところか…

お互い業務提携を結べば更なる事業拡大を見込める話である為 願ったり叶ったりな訳だが、会食が実現する今日になり先方から都合が悪くなったと連絡があった。

随分と失礼な話ではあったが、会長自ら謝罪の連絡があり代わりの者を向かわせるという…

少々変更点があったとしてもこの話をなかった事にするには惜しいと思った俺は先方の提案を承諾したのだが…

(まさか娘を寄越すとはな…)

そこでふと手元の資料に視線を戻す
〈西園寺 マリア調査報告書〉と書かれた資料を捲り、添付された写真を見る。

見る者を引き付けるアーモンドの形をしたグレーの瞳に長い睫毛、すっと通った鼻に形の良い唇は薔薇の花びらの様に色鮮やかで胸の辺りまである色素の薄い髪は美しい光沢を放っていた。

容姿の綺麗な女性は今までにも沢山目にしてきたが写真の彼女にはそれ等の女性とは少し違う様な印象を受けた。

(彼女がTシャツにジーンズというラフな格好のせいだろうか…?)

ぼんやりとそんな事を考えていると橘が再び口を開く。

「あと10分程で到着いたします」

「ああ」

返事をすると気持ちを切り換えるべく窓の外に目をやった。
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