悪魔なCEOとワガママお嬢様



………

「ねえママ…着物ってどうしてこんなに息が詰まるのかしら」

私達を乗せた車が目的地の料亭 磯松に到着した後、先に届けておいたらしい着物に着替えさせられた。
薄い桃色の桜が散りばめられたその着物は掛けてある時は溜息がこぼれる程美しかったのに…見ると着るとじゃ大違いだわ…

普段束ねたりもしない髪の毛も着物に合わせて結い上げられて…なんだか首周りがスゥスゥして落ち着かない。

「あら?心も体もピンとするからママは着物好きよ。それにマリアもとっても似合ってるわ」

「ありがと…でも私は好きになれそうにないわ」

用意された部屋にママと並んで座りながらどうにか楽な体勢はないかともじもじしてしまう。
だって着物を着るとなんとなく正座しないといけない気がして正座慣れていない私にはつらいんだもの!

(もうダメだ足痛い…)

立ち上がろうとすると襖の向こうから「失礼致します」と声がして襖が開いた。

「お連れ様がご到着なさいました」

恭しく頭を下げる女将さんを膝だち状態で見ているときちんと座りなさいってママに叱られた。

「足痛いんだもん!パパが来ただけでしょ?」

文句を言いながら座りなおしてママに問いかけた瞬間、頭を下げた女将さんの横を通り抜けて入ってきたのは私の知らない男だった。



< 4 / 20 >

この作品をシェア

pagetop