eternity
~side ~
夕暮れの学校帰り道。

俺は柳也と帰っている。

梨乃ちゃんに言伝してもらい柳也を誘った。

梨乃ちゃんは柳也が言伝通りにするのは50%くらいと言ったが、柳也がはぐらかしているだけで成功率はほぼ100%に近い。

俺が梨乃ちゃんに頼むのは柳也を誘えば必ず来てくれるという保証めいたものを信じているからだ。


最近柳也の様子が変だったのと昨日電話で俺に言ったことが気になったからである。

「なあ柳也、お前が昨日俺に言った転校するって話本当か?」

「あぁ本当だ」

「あいつら、そのこと知っているのか?全然知らないって感じだったけど?」

「いや、あいつらには言ってない」

「まさか柳也、お前はあいつらには何も言わないつもりでバイバイとか、ぬかさないよな?」

「・・そのつもりだけど」

「っ!どうしてだよ!なんでだよ!」

「・・・」

「答えろよ、柳也!」

「別にあいつらには関係ないことだろ?俺が転校すると言ったところでどうなるわけでもないだろう?」

「ふざけんなよ!関係ない?どうしててめえがそんなことが言えんだよ!あいつらはお前の彼女だろ?幼馴染だろ?どうして関係ないんだよ!」

「・・・別に、理由なんてねえよ、俺が関係ないと思えば関係ない、違うか?」

「本気で言ってるのか、そんなことを?」

「俺はいつでも本気だ」

拳を握り締めた。

こいつを本気でぶん殴ってやりたかった。

こいつはこんなに理不尽なやつだったということに怒りを覚えた。

それと同時にこんなやつとダチやっていた俺にも怒りが沸いた。


「なぁ柳也・・・、お前があいつらは関係ないって言うならそれでもいい。でもじゃあ俺はいったい何なんだ?
俺はあいつらより後に柳也と知り合った。あいつらと比べれば俺はお前との付き合いなんて薄いもんだ。そんな俺には転校のことを言えてあいつらに言えないってのは変じゃないのか?俺はあいつらより関係ない人間で、赤の他人同然だからそんなことを伝えたのか?」

それまで淡々と語っていた柳也がふいに目をそらしたのに気づいた。

その時ふいに柳也と出合ってそう時間のたたない時期のことを思い出した。



俺は転入当時は柳也のことを最初はドライで冷淡で女泣かせの冷たいやつだと思っていた。

だから柳也のことは正直好きではなかったが、柳也の幼馴染と名乗る女の子がこう言った。

「りっちゃんはね、冷たいとか、目が怖いから冷血漢と思われるけどね、たんに不器用なだけなんだよ。
本当はいろんなことに一生懸命で優しいから柚明君も気に入ってくれると思うよ」と。

その後そんなことを言った女の子は柳也に、「余計なことを言うな」とか、「あることないこと捏造するな」とか怒られていたっけ。

柳也は怒っていたけど照れていた。

俺が思うに照れるのを隠すために怒っていたようにさえ思えた。

それで気づき始めたんだ。

こいつ、その女の子が言うように結構不器用なやつなのではないかと。

それから俺は柳也とつるむようになった。

今思えばあの女の子の一言がなければ俺と柳也の関係はなかったと思う。

・・・不思議なもんだよな。

柳也は本当は不器用。

そんな言葉が頭をよぎった。

・・・柳也は本当はだた不器用なだけ。

そう思うと俺は怒りを忘れていった。

「なあ柳也、お前がやつらのことを関係ないと思うなら・・・それでいい」

柳也は不器用なやつだ。

「・・・でもな」

不器用なだけで、さよならもなしでお別れなんて俺だったら嫌だ。

「これは俺からの頼みだ。お前の言うようにやつらは関係ない俺からの頼みが一つある」

これは強要かもしれない。

「お前が転校することはあいつらに話してほしいんだ」

これが最善ではないかもしれない。

当本人である柳也は何で、という顔で俺を見る。

「だって可哀想じゃないか、二人ともお前のことを大切に思っている。俺だってお前のことは嫌いじゃない。
だけどあいつらは俺なんかよりずっとずっとお前のこと大切に思っていると思うんだ。違うか?」

ただ首を横に振る。

「あいつらに何も言わずにいなくなるなんてこと、しないでくれ」

しばしの沈黙の後、

「・・・時間をくれないか」

柳也はそう言った。

「あぁ、だけど時間制限は守れよな?」

反応はあぁ、という一言だけ。

「うし、じゃあここでお別れだな。俺の頼みなんて聞きたくないと思うなら別にいいぜ。無理強いはしたくないしな。だけど、じっくり考えてほしいんだ。後悔しないルートはなんなのかということを」

別れ際に俺は柳也に向かってこう言った。

「お前から借りたゲームの兄(にぃ)ちゃん、格好良かったぜ!」

遠まわしに、お前もあれぐらい格好良くなってみせろと言ったつもりなのだが、今の柳也にそれが伝わったかはわからない。

だけど信じてみよう。

柳也の幼馴染みが言っていたあの言葉。


りっちゃんは本当は優しいんだよ、というその言葉を。
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