eternity
第1章
~two years ago~

4月15日

「ねえ、りっちゃん。最近杏に冷たくない?」

昼食時、学食で私は一緒に座っているりっちゃんに問いかける。

「そうか?別に普通じゃない?」

そんなことを言いながらりっちゃんはうどんを食べている。

「ぬ~、普通って・・・」

私はカレーを食べている。

前にコロッケをトッピングしたらコロッケをりっちゃんに取られた辛い思い出があったので、りっちゃんとご飯を食べるときにはトッピングはしないように心がけている。


私たちが通っている学校は白鷺(しらさぎ)学園という中高一貫校。

中等部を卒業してエスカレータ方式で高等部に入学し最上級生になっていた。

杏は中等部からのエスカレータではなく、高等部から私たちと同じ学校に入学しました。

白鷺学園は中高一貫の進学校と謳っているわりにすごくレベルが高いわけでもなくのんびりしているのが特徴といえば特徴かな。

杏ならもっと上の学校に行けたと思うのに・・・。

やっぱりりっちゃんと一緒にいたかったのかな?

大晦日の日から2年とちょっと。

りっちゃんと杏は今でも付き合っている。

でも最近二人の様子を見ててもりっちゃんはなんか素っ気無い。

「りっちゃんは杏の彼氏なんだから、ちゃんと彼氏らしくしないとだめだよ?」

付き合うきっかけはどうであれ、杏から想われているのは事実なのだからもっと優しくしてあげてもいいんじゃないかな?

「お前なぁ~、またよくわかんないことを。そもそも彼氏らしくって何だよ?」

少し不機嫌そうに聞いてくる。

「彼氏と言ったら、彼女さんに優しくするとかぁ。もっともっと一緒にいてあげるとか。そもそも夜にかけてくる彼女さんの電話をスルーするなんて論外だよ!」

今日だって、いくら杏がお弁当組だからといっても、杏に声をかけずに1人で学食に行こうとしたのはどうかと思うよ、同じクラスなんだから。

りっちゃんと杏が付き合っているっていうのはクラスの人の周知の事実なんだし。

「お前、絶・対・恋愛漫画とか読みすぎ!」

はぁ~、やれやれ、といった感じでやれやれのポーズを決める。

ぬ~、確かに私は漫画読むほうだけどりっちゃんに言われると何か不服ぅ。

「だいたいお前もお前だ。俺には杏という彼女がいるんだぞ。俺の彼女のことを大切に思ってるんだったら、何でお前が俺のそばにいるんだよ」

りっちゃんの言い分としては自分に彼女がいることはクラスのみんなが知っていることだからいいけど、彼女がいて、さらに幼馴染もいて、さらにラブラブという誤解が生じていることに問題があるということらしい。

「これじゃ、俺が女にだらしないみたいじゃないか。俺は紳士だぞ?」

実際、杏に冷たいじゃん!とか紳士はもっと優しいよ!とか言ったら叩かれそうだから黙っていよう。

「私だってりっちゃんが杏にちゃんと彼氏らしく接していたら何も言わないよ」

いくら幼馴染の私でも彼氏彼女の関係の中にずけずけと入り込むほど野暮じゃない。

でも冷たくされる杏が可哀想だよ。

「はいはい、じゃあ俺が彼氏らしくないのがいけないんだな?俺が全部悪いですよ~だ」

あ、・・・いじけちゃった。

りっちゃんは我が強いからよくいじけたり、逆切れしたりする。

このいじけモードになってしまったらもう何を言ってもだめ。

機嫌を直してくれるまで待つしかない。

小さい時は逆切れされてよく叩かれたりしてたけどさすがに暴力はふるわなくなった。

けど、いじけるとか余計に性質が悪くなったと思うのは気のせいかな?

「ぬ~、もういい歳なんだからいじけないの。福神漬け食べる?」

「いらない」

どうやら福神漬けでは機嫌を治してくれないみたい。

・・・当たり前だよね。
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