さよならのキスの代わりに

「マイ?」


先輩が不安そうに呟く。


…こうやって名前を呼んでもらえるのも、あと何回だろう。

憧れていた声は、いつの間にかすっかり馴染んで当然のものになっていた。



……ああ。


好きだよ、先輩。

すごく、すごく。



だけど、それでも。


どんなに好きでも

どんなに離れたくなくても



お別れしなきゃいけない時は、あるでしょう。



「海外なんてすごいですね!

頑張って下さい!」



泣くのは、悲しむのは、私だけでいい。

先輩が苦しまないで済むなら、何だっていい。


今までたくさんワガママ言った。

そのせいでたくさん傷つけた。


だから先輩の視界から私が消えるこの時に。



私も先輩から消えるんだ。


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