さよならのキスの代わりに



「マイ、今日も元気ないね」


どうしたの、と友達が言う。



「何でもないよ」


気にしないで、と私は笑った。


あの日、先輩に「さよなら」と言ってから、もう2週間が経つ。


その間も何度か先輩を見かけたけれど、その度に私は逃げ続けた。

その度に先輩は悲しそうな顔をした。


それが苦しくてたまらなかった。


先輩に幸せになってほしくて、信じて、決断したことなのに。



「明日なんでしょ、先輩」


ちゃんと話せたの?と友達は言う。


「うん」


返事はしたものの、始めて聞いた内容だった。



…明日。

そうか、明日にはもう先輩は行ってしまうのか。


ああ、本当に。


私は彼女だったのに、誰より近い存在だったのに、どうして何も知らないのだろう。


はあ、と溜め息を吐いた。


そのとき、ケータイが震えた。

< 14 / 24 >

この作品をシェア

pagetop