さよならのキスの代わりに


何も考えずにメールを開けば、それは先輩からのものだった。


『明日、午前10時に空港で。』


短い、短い文章だった。


付き合っていたころと同じ。


それが懐かしくて、寂しくて、視界が少し滲んだ。



先輩の文章は、疑問形じゃない。


それはつまり、先輩は、信じてるということ。


絶対、明日の10時に私が空港に来ると、信じてるんだ。


今すぐに、会いたくなった。

走り出したくなった、先輩のもとへ。


だけど、今の私には何もできない。


それに、どんな顔をして会いに行けばいい?


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