さよならのキスの代わりに
*
先輩に会いたい。
だから、会いに行く。
いつだって先輩と会う理由はこれだけだ。
*
風を切って走り抜ける。
息が切れ、汗が流れる。
だけどそんなことを気にしている暇がないくらいに、気持ちは逸っていた。
途中、赤信号に引っかかる。
点滅していた信号が目の前で赤になった。
目の前を横切るいくつもの車。
早く変われ。
青に変われ。
信号はゆったりと、いつも通りの感覚でその色を変えていく。
だけど今日は信号待ちの時間がすごく遅く感じた。
今は1分が、1秒が、惜しい。
立ち止まっている暇などないのに。
やっと信号が青に変わるとまた私は自転車をこいだ。