さよならのキスの代わりに





先輩に会いたい。

だから、会いに行く。


いつだって先輩と会う理由はこれだけだ。





風を切って走り抜ける。


息が切れ、汗が流れる。


だけどそんなことを気にしている暇がないくらいに、気持ちは逸っていた。


途中、赤信号に引っかかる。

点滅していた信号が目の前で赤になった。


目の前を横切るいくつもの車。


早く変われ。

青に変われ。


信号はゆったりと、いつも通りの感覚でその色を変えていく。


だけど今日は信号待ちの時間がすごく遅く感じた。


今は1分が、1秒が、惜しい。


立ち止まっている暇などないのに。


やっと信号が青に変わるとまた私は自転車をこいだ。


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