さよならのキスの代わりに
空港の管制塔が見えてきた。

その向こうには飛行機が見える。


先輩はこの飛行機に乗り込んで外国に行ってしまうのだろうか。


焦る気持ちと不安がせめぎあい、相乗効果で雲みたいに膨れ上がる。


空港の駐輪場に自転車を置くと同時に走り出した。


息を切らして汗を拭って、空港の中、辺りを見渡す。


大きなスーツケースを持ったカップル、スーツを着こなすサラリーマン、楽しそうな親子連れ。


たくさんの、人。


だけどどこにも先輩の姿はない。



…いったい、どこに。



するとふいに人混みの間から先輩の顔が見えた。



…いた。



心臓はバクバクと心拍する。


会いたい、今すぐに走り出したい衝動のままに、私は走り出した。



「ユウ先輩!」



大好きなひとの、その名を叫んで。



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