さよならのキスの代わりに
人混みの中で見えた先輩は辺りを見渡していた。


けれど私の声が聞こえた瞬間、先輩ははっと私を見つけた。


目を見開いた後、ふっと柔らかな笑みを浮かべた

__かと思いきや。




「えっ!?」




先輩は私を抱きしめた。


抱きつかれる前に見えた先輩の顔には、いつもの穏やかな表情などどこにもなかった。


「せ、せんぱ…」


「ほんっとに、マイは…!」


私が言い終わらないうちにそう呟くと先輩は抱きしめる力を強くした。


「いっつもそうなんだよ、マイは!

ひとりで勝手に決めつけてつっぱしって、俺には何も言わないで、俺の気持ち分かってないくせに!」


< 19 / 24 >

この作品をシェア

pagetop