さよならのキスの代わりに
「どうしたの、マイ」
いつもみたいに元気がないねと先輩は笑いかける。
私はふいとそっぽを向いて、黙っていた。
何も言う気になれなかったし、何て言ったらいいのか分からなかった。
先輩、留学するの?
どこに行くの?
いつ行くの?
どうして私には何も言ってくれないの?
…聞きたいことはたくさんあるのに、答えを聞くことが怖くて。
「……先輩こそ、何か言うことがあるんじゃないですか」
いつもより少し低くて、不機嫌な声。
すると先輩は少し目を見開いて、またいつものようにやさしく笑った。
「…知ってたの?」
眉を少し下げて、寂しそうに笑った。