さよならのキスの代わりに

「どうしたの、マイ」


いつもみたいに元気がないねと先輩は笑いかける。


私はふいとそっぽを向いて、黙っていた。


何も言う気になれなかったし、何て言ったらいいのか分からなかった。


先輩、留学するの?

どこに行くの?

いつ行くの?

どうして私には何も言ってくれないの?


…聞きたいことはたくさんあるのに、答えを聞くことが怖くて。


「……先輩こそ、何か言うことがあるんじゃないですか」


いつもより少し低くて、不機嫌な声。


すると先輩は少し目を見開いて、またいつものようにやさしく笑った。


「…知ってたの?」


眉を少し下げて、寂しそうに笑った。


< 5 / 24 >

この作品をシェア

pagetop