未熟女でも大人になっていいですか?
「昔は料理するのなんか一度も見たことねぇ。バカが付くくらい真面目な野郎で、会社一筋の人間だったから」


「そんな人が何故急にお店を?お婆ちゃんの影響?」


「…さあ、どうか知らん」


どうでもいい…と言いながら味わっている。

家とは食べるスピードが違う。

じっくりと味わって、ゆっくりと遅く食べていた。



「私の作る料理も同じくらいのんびりと食べて欲しいわ」


つい出てくる本音。


「カツラのメシは旨過ぎて箸が止まらねぇんだ」


上手い言い訳をする。


おかずと一緒に運ばれてきたご飯も空豆のスープも絶品だった。

何より食後に運ばれてきた果物が、どれも新鮮で甘い。


「美味しい!」


スモモにさくらんぼに梅の甘露煮。


「喜んでもらえて嬉しいわ。どの果物もうちの庭先で採れた物なのよ」


お母さんが自慢する。


「庭に果樹があるんですか!?」


羨ましい…と呟く。


「カツラの家には藤棚があるじゃねぇか」


高島が口を挟む。


「まあ、藤棚?」


お母さんの目が輝いた。


「亡くなった父が植えた樹なんです。でも、蔓の手入れが大変過ぎて、毎年母と苦労ばかりしていました」


「ご両親は早くに亡くなられたの?」


「父は私が幼い頃に。母は今年の2月末に亡くなりました」


「まあ、そう。お気の毒に…」


しんみりとさせてしまった。

気落ちした様子のお母さんは高島の顔を覗き込んだ。


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