未熟女でも大人になっていいですか?
「結婚するのなら藤さんを大切にしないとバチが当たるわよ、望」


「バチなんか当たらねぇよう、大切にはしてる!」


「本当に?」


こっちを見て確認された。


「本当です。望さんはそれなりに優しいです」


「『それなりに』は余計だろ」


「だって、たまに適当な時もあるし」
 

「それはカツラが考え過ぎるからだ」


「私は考えすぎなんじゃない。慎重なだけ!」


またしても軽く言い合う。

お母さんは笑い声を上げ、「楽しそうね」と微笑んだ。



「それなりに楽しい毎日ではあるな」


「『それなりに』じゃなくて、『とても』楽しい毎日です!」


1人ではないことが実感できて楽しい。

高島に会えたことは、きっとこれからも素敵な思い出になっていく筈だ。



「そう言えば、さっき奥へ行ったらお婆ちゃんがお待ちかねだったの。食べ終えたら顔を見せに行ってあげて」


『Staff Room』のプラスチックプレートが貼られたドアの向こうを指差された。



「婆ちゃん、俺のこと分かるか?」


高島が尋ねる。


「今日は分かるみたいよ」


「分からない時があっても仕方ないでしょう。望はちっとも音沙汰がなかったんだから」…と、お母さんは軽い嫌味を言い足した。



「自業自得だな」


しょんぼりと肩を落とす。

どうやらこの男はご両親よりもお婆ちゃんの方が大事らしい。


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