未熟女でも大人になっていいですか?
ドアを開けて中へ入ると、真っ直ぐに伸びる廊下があった。

それを道なりに曲がり、母屋へと渡る。



「面白い家の造りね」


キョロキョロと見回しながら進んだ。

中庭が見える廊下の端っこに障子扉が見える。



「婆ちゃん」


高島が開けずに声をかけると、中性的な掠れ声が聞こえた。


「望かい?おかえり」


障子の扉を開け、高島が中へ入った。


「ただいま」


ようやく帰省の挨拶をする。

初めてお会いする高島のお婆ちゃんは、ほっそりと痩せて小さかった。

白髪頭に深い皺の入った横顔を見つめ、きゅん…と胸が切なくなる。



「お嫁さんになる人と一緒だとお母さんが言っとったけど?」


何処かの方言の様な言葉を使った。


「ああ、そうだよ」


来い来い…と手招きされる。

正面に座らされ、高島から紹介された。


「仙道 藤さん。俺の選んだ女」


高島の言葉に照れつつ頭を下げた。


「初めまして」


顔を上げると、ご住職に似た顔の人は笑った。


「可愛い子じゃねぇ」


『子』と言われて戸惑う。

アラフォーの自分には、似つかわしい様なそうでない様な気がする。


「婆ちゃんの弟の寺の檀家なんだ」


「あら、そうなんかね」


目が見開く。


「ご住職には、いつもいろいろとご配慮頂いてます」


話の共通項があるというのは有難い。

暫くの間、その話で盛り上がった。


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