未熟女でも大人になっていいですか?
「あの子も若い頃は人生迷ってばかりいたねぇ。いろんな事に手を出して、結局、身寄りの無い寺の住職に落ち着いて……」



思い出話というのは時に酷な気がする。

それを聞いた高島は、思いきりご住職を馬鹿にした。


「人のこと言えねーじゃねぇか」


ぶつぶつ…と小言を繰り返している。

お婆ちゃんはそんな男を眺め、大きな息を吐いた。


「やっと望が一人前になったねぇ」


安心した様に呟き、手を握った。


「今度はひ孫を見せに来ておくれ。婆ちゃんずっと待っとるから」


細くて皺だらけの手の甲は筋張って見えた。

その手を両手で包み、高島はしっかりと返事をした。



「分かっとう。婆ちゃんも元気で長生きせぇよ」


方言を合わせて答えるとお婆ちゃんの目尻から大きな涙の粒が溢れ落ちた。




「……藤さん」


お婆ちゃんが涙ぐみながら振り向く。

潤んだ瞳を向け、にこっと笑った。


「望をよろしくお願いするねぇ。無鉄砲でどうしようもない子やけど、優しいところもあるから」



「……はい」


それ以上の返事はできなかった。

涙で声が詰まって、目頭を押さえるので精一杯になった。



お母さんに呼ばれて部屋を出た。


高島は名残惜しそうに、何度もお婆ちゃんに目を向けていた。


店に戻るとお客さんのピークは過ぎていて、手の空いたお父さんはむぅっとした表情でカウンターの椅子に腰掛けていた。


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