未熟女でも大人になっていいですか？
「お父さん、そんな顔したら藤さんが喋りづらいからよして」


お母さんに諭されていくらか表情を和らげる。


「さっきの続きを話そう。一体いつから一緒に住んでるんだ」


和らいだ表情とは違い、声だけは厳しいままだ。

ごくっと唾を呑み込む私に代わり、高島が返事をした。


「先月の頭から」


適当過ぎると思ったけれど黙った。

お父さんとお母さんは顔を見合わせ、「それで…」と続けた。


「式は挙げるつもりなのか」


何も決めていないうちから聞かれても困る。

昨日ようやく恋人らしい関係になったとも言い出せない。


「まだ何も決めてないけど…」


その答えが気に入らないらしく、お父さんはゴホン！と咳を払った。



「お前は相変わらずいい加減な男だな」


相変わらずと言われ、今度は高島が言い返す。


「俺は別にいい加減なことはしてねぇ！」


怒った表情を見るのは二度目だ。

でも、昨日よりも恐ろしい顔をしている。


「１０年前、仕事を探しに行くと言って出て行ったきり何も言ってこなかったと思ったら今度は結婚するだと？しかも相手の親がいないからと言って、いつの間にか一緒に住んでるというのはどういうんだ！順番が違うだろう！」


「お父さん、近頃はそういうのは当たり前で……」


落ち着いて…とお母さんが話す。

でも、まるで容赦がない。


< 124 / 208 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop