未熟女でも大人になっていいですか?
「望さん、お父さん達に挨拶しなくていいの!?」


こんな尻切れトンボみたいな形で、次に来た時が思い遣られる。


「いいんだ。言ったろ?俺は居てもいなくてもいい存在なんだって」


「でも!これじゃお母さんがあんまり可哀想…」


これが自分の親なら堪らない気持ちになる。そう思って反論したのに……


「お袋なら慣れてる。昔から俺達の言い争いを見てきたから」


ほら乗れ…と車のドアを開けられた。

睨み付ける私を見向きもせず、自分は運転席へと移動していく。



「望さん……」


どうしてこんなにも意地を張るんだ。

お婆ちゃんにはあんな優しいところを見せていたのに。


振り向いて店の方を眺めた。

出入り口の側に佇む人の目が、悲しそうに見える。


こんなの間違っている。

こんな感じで式を挙げていい訳がない。



「望さんとは一緒に帰らない!」


助手席のドアを閉めた。


「何だと!?」


高島の目が引きつる。


「だって、お母さんが寂しそうだもん!自分の親を大切にしてくれない人と結婚なんてしないし、式も挙げたくない!」


自分にはもう親がいない。

孝行したくてもする相手がいない。

それがどんなに切なくて寂しいことか、この男には分からせる必要がある。


「きちんとお母さんには挨拶していって!お父さんとどんなに張り合ってもいいからお母さんには優しくしてっ!」


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