未熟女でも大人になっていいですか?
訴えながら涙が出てきた。

何も言わずにあの世へと逝ってしまった母のことを思い出すと我慢できない気持ちになった。


ボロボロと溢れてくる涙を拭わずに睨んだ。


高島は私の顔を無言で見つめ返し、やがて一言だけ囁いた。



「……分かった。ちゃんと声をかけてくればいいんだな」




「待ってろ」と呟やき店の方へと戻る。

カウベルを鳴らして店内に入り、二言三言お母さんと話をして出てきた。



「挨拶はしてきたぞ」


戻って来るとぶすっとしたまま声をかける。


「お母さんは何て?」


つい確かめてしまう。


「『仲良くやりなさいって言われた。泣かせたらダメ』…と」


「本当にそうよ」


グシっと鼻をぐずらせた。



「……ごめん。悪かった」


「分かってくれればいいの。お父さんもお母さんも大事にしてあげて欲しい。たった1人しかいない大切な親なんだから」


鎖骨の上に額を乗せて泣いた。

温かい掌が私の背中を撫で摩る。



「もう泣くな」


「泣くわよ。望さんが親不孝ばかりするから」


「式を挙げるのは親不孝か?」


「いきなり決めるから驚いただけ。本当は嬉しい」



「カツラ……」


甘い響きで名前を呼ばれて胸がきゅん…となる。


切なくなる涙も悔し涙も、これからは全てこの胸の中で流そう。

家族という枠組みの中で、私はもう一度生きれるのだから。


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