未熟女でも大人になっていいですか?
母のお葬式の日に集まった人達は、私が籍を入れるくらいではわざわざ足を運んできたりはしないだろうと思う。


「同僚の音無さんも出席してくれると言うし、私の方は精々4人がいいところね」


高島の親子関係を責める以前の問題がうちの両親にはある。

お陰さまで私は1人になってもこの家に住んでいられる。


「たかが入籍式をするってだけだ。大勢来られても困るから丁度いい」


「気楽な式にしよう」と笑った。

私が肩身の狭い思いをしないで済むよう、そう言ってくれるのだろうと思う。


「望さんがお父さんと喧嘩しなければ助かるわ。昨日みたいに険悪なムードにだけはならないでね」


意地の張り合いを続けるのもお互いの性格が似ているせい。

それが親子なら余計でも気を使う。


「分かってる。大人らしい対応をすればいいんだろう」


「うん、よろしくお願いします」


テーブルに額をぶつけそうなくらい深く頭を下げた。

食事をしながら高島は「任せておけ」と、心強い発言をした。



それからの数日間は何の音沙汰もなく過ぎ、木曜日の夜、心待ちにしていた人からの電話があった。



「藤ちゃん、元気!?」


大きな声が電話口から響き、私は思わず受話器を耳から遠ざけた。


「うん、私の方は変わらずです。伯母さんは?体調はいいですか?」


天然パーマのヘアスタイルを思い浮かべながら問ってみた。


「元気元気!健康そのもの!」


明るい口調で伯母は返事をくれた。


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