未熟女でも大人になっていいですか?
夕食後の食器洗いを頼んで仕事を始めた。

机の上には先日撮られたばかりのツーショット写真が飾られてある。

3人の幹事達が気を利かして、私の元へ送り届けてくれたのだ。


添えられていた手紙の送り主は立石君だった。

彼はその手紙の中で、あの子についても触れていた。


『葛西に会って先生のことを話しておきました。すごく安心したようで、何度も嬉しそうに笑って泣いて……「これでやっと長い呪縛から解き放たれる」と、意味不明な言葉を吐いていました……』


『長い呪縛』という文字が目を引きつけて離さなかった。

私と同じように、彼もきっと心を痛め続けてきたに違いない。


災いというものは何処で降りかかるものか知れない。

でも、どんな災いにも必ず解ける魔法があったらいいな…と、その手紙を読み返しながら願った。



その日の夜は久しぶりに1人で眠った。

高島の体温を感じない独り寝は、何となく冷たくて寂しい思いのするものだった。


父を失ってからずっと、母はこんな夜をたった1人で過ごしてきたのだろうか。

そう考えると、今の自分も我慢しなくてはいけないと思う。


大人になるというのは、時に切なくなることを言うのかもしれない。

その倍の速度で、嬉しさも膨らんでいるのだと気づかない夜のことだったーーー。



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