未熟女でも大人になっていいですか?
「もしかして俺が寺で声をかけられたのは、カツラのお父さんに似てると思われたせいか?」


ハッとして高島の方を振り向く。

それから直ぐに目線を離し、両親の遺影を見やった。



「何?その話。ちょっと聞かせて頂戴」


桜伯母さんは身を乗り出してくる。

高島は母に声をかけられた夏の日を思い浮かべながら話をして、最後にぽそっと加えた。


「俺が断った後も暫くその場に突っ立ってた。お陰で見張られてるみたいな気がして、気分があまり良くなかったな」


「す…すみません……」


母のこととなると、つい謝ってしまう。


「ああ、それは完全に義兄さんを思い出しながら見てたんだわ。病気で亡くなった後も、ずっと姉さんは義兄さんのことを愛し続けていたから」



(やっぱり。そうだったのか……)


長い間引き出しに仕舞い込まれていた写真の意味が分かった。

母にとって、父はずっと生き続けている存在だったのだ。



「どうしてお母さんもお父さんも他の兄弟や親達と疎遠だったの?」


残った疑問を口にした。

伯母は寂しそうな笑みを浮かべ、「それはね…」と語りだした。



「本来、義兄さんがお見合いをするべき相手はご両親が懇意にしていた方の娘さんでね。その方は戦時中、お金や物の無い時期に随分と高島家を助けて下さったそうなの。

それで、次男として生まれた義兄さんがその家の跡取り娘の婿として迎えられることになってたんだけど、姉さんと結婚することを勝手に決めてしまい、その方達のご恩に背いてしまった。

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