未熟女でも大人になっていいですか?
私達の両親にとっても、左官工という義兄さんの仕事が気に入らなくて。姉さんは反対を押し切って、彼と一緒になってしまったものだから……」



全てはたった一通の手紙が引き起こした恋の結末。


伯母は話をしながら悲しそうに遺影を見やった。

同じように感慨に耽り、両親の表情を眺める。


「……でも、いつまでもそんな過去のことに拘ってたら駄目よね。藤ちゃんが結婚式をすると言うのならお爺ちゃんやお婆ちゃんにも出てくれるよう頼んでみるわ。

姉さんが亡くなってからこっち、2人もたまに反省の言葉を口にする時があるから」




(……っすん)


その場で泣く訳にもいかず我慢をした。

心の中で、いつもの様に涙を堪えてお風呂の準備を始める。


仏間で話をしている2人の声は楽しそうだった。

時々思いきり声を上げて笑う。

その笑い声が両親のものに思えて切なくなる。

今日知ったばかりの話を、せめて母の口から聞いておきたかったーー。



桜伯母さんにお風呂を勧めて布団の準備をし始めた。


高島が一番最初にこの家に泊まった時と同じ、仏壇のある部屋でいいと言われた。



「1週間くらい泊まろうかと思ってたけど2、3日で帰るわ。今度は入籍式の日に伺う。また2、3日泊まるつもりで来るから準備をよろしく頼むわね」


明るい伯母さんの表情が寂しそうに見えた。

それはきっと、自分の心が狭っ苦しく感じていたせいだと思う。


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