未熟女でも大人になっていいですか?
「……平気か?」


布団を敷き終えた時、高島に声をかけられた。


「うん。ちょっといろいろ聞いて驚くことも多かったけれど大丈夫。お父さんもお母さんも大変だったんだな…と少し思っただけ」


2人に比べると、自分達は幸せなんだ…と思う。


「認めん」と言った割に、高島のお父さんは認めてくれている。

何よりお婆ちゃんがひ孫の誕生までを期待して待っている。

まだ会ったこともないご兄弟達とは、仲が悪くないと聞いた。

それだけで、うちの両親よりも何倍もいい環境が整っている。



「泣くなら泣いていいぞ。今なら伯母さんも風呂だし」


「泣くなんてできない。私は十分幸せだから。でも……」


ことん…と鎖骨に擦り寄る。

胸板の厚い高島に凭れるこの瞬間が、何よりも一番好き。


ホッと安心に包まれる。

そして、生きていると感じられる。



「望さん……」


「ん?」


「私と……ずっと一緒にいて下さい。元気で長生きして、父や母の分も末永くよろしくお願いします……」


「何を今更。改まって言わなくもいい」


「ううん。口にしておきたいの」



母が倒れたのは急だった。

父が病気で亡くなったのも、あっという間の出来事だった。


人は明日も元気でいられるのだという保証は何処にもない。

むしろあったとしたら、それは奇跡に近いことなのだと感じる。


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