未熟女でも大人になっていいですか?
「そうか、藤の婚約者か」


「これで亡くなった者達が安心するわね」


「何!?入籍式をする!?そうか、結婚式はできないからな」


桜伯母さんが話すよりも高島との方が会話が弾むらしい。



「望君には人を安心させる何かがあるのかもね」


すっかり『君』付けで呼んでいる伯母さんの言葉に頷きながら読経に訪れた住職を出迎えた。


し…んと静まり返った室内に衣擦れの足音が響く。

分厚い座布団の上に座り、低い読経の声が始まった。


経本に書かれた文字を目で追い、自分も一緒に読経を進める。

法要が終わった後で高島がご住職の親戚だと分かり、伯父や叔母達はますます安心の度を深めた。



「世の中は広いようで狭いもんです」


笑いながら話すご住職との会話に耳を傾ける。

その時だけは、高島もいつもの減らず口を挟まずにいた。


「来月、うちの寺で2人の入籍式を執り行うことになっております。その節は皆様方も是非お集まり下さい。

ご縁の結びを見守る者は多い方がよろしい。故人もまた、同じ思いで居られると存じます」


口添えのお陰か、親戚達は口々に「出席しよう」と言いだした。



「これからはお前も性根を据えて生き直せよ」


帰り際に高島を諭した後、「『誓いの詞(ことば)』を考えておくように」と頼まれた。

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