未熟女でも大人になっていいですか?
大人になってもいいですか?
「あー、疲れた疲れた」


玄関の扉を閉めて、高島はやれやれ…とネクタイの結び目を解いた。



「腹減ったー」


私の分の料理まで食べているのにそれを言うか。


「呆れた…」


呟きながらも何かないかと冷蔵庫を探る。



「カツラ」


「何?」


後ろから名前を呼ばれ振り返った。

真面目くさった顔で近寄る高島の表情が固い。



「どうかしたの?」


髪の毛を触る仕草にドキンと胸が鳴った。


「……お前、具合でも悪いんじゃないのか?」


「別に?何処も悪くないけど」


何故急にそんなことを聞くのか。


「いや、カツラがメシ食わねぇのって、なんか珍しい気がして」


「ああ、お昼ご飯のこと?」


冷蔵庫のドアを閉めて、昼食時のことを思い出す。

お祝いの仕出し料理が並んだテーブルを前にして食欲が全然湧かなかった。


「ちょっと胸が一杯になり過ぎて気分が悪かっただけよ。夕飯はきちんと食べるからご心配なく」


2、3日泊まると言っていた伯母は、他の兄弟達から引き止められて家に帰った。

予定とは違い、2人だけの夕食を取ることになっている。


「望さんは何が食べたい?」


ドアの取っ手に手を掛けて聞いた。


「カツラ」


「冗談じゃなくて食べ物の話」


笑いながら顔を見直す。


「冗談なんて言ってない。本気」


「でも、まだ明るいじゃない」


「明るい中で食いたい」


「それは困るわ」

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