未熟女でも大人になっていいですか?
だから、来るべきものが来てないことにずっと気づいていなかった。



「腹でも壊したのか?」


ドアの外で高島が気にする。


「ううん……壊してなんかない……」


茫然と答えながら出てくる冷や汗。




(まさか……もう……?)



トイレから出ると直ぐに仏壇の前に駆け寄った。



(お母さん、どうしよう)



無言のまま問いかける。

急に広がる不安。

数珠も持たずに手を握りしめている私に気づき、高島が隣へやって来る。


「報告のやり直しか?カツラは律儀だな」


日に焼けた顔が笑う。

この男に今の不安を伝えたらどんな表情を見せるのだろう。



「カツラ?」


「あ……うん、何だか安心したと伝えたくて」


誤魔化しながらマッチを擦ってロウソクを点した。

線香に火を移して灰に立て、そのまま目を瞑って拝む。



(……これは偶然の続きなの……?)


問いかけながら目を開けると、そこには神妙そうな表情を浮かべた両親がいて………




(……っすん)



泣き出しそうになるのを堪えた。

今日から私が泣く場所は亡くなった両親の前じゃない。



「俺も拝もうかな」


菩提寺でご住職様から頂いた新品の数珠を手に座る男。



「望さん」


「ん?」


振り向く顔が優しく微笑む。


「あのね、私、大人になってもいい?」


漠然とした質問に首を傾げる。


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