未熟女でも大人になっていいですか?
トン、トン、トン………


生気のない音が聞こえる。

キッチンに立つカツラは、さっきからずっとこんな調子で野菜を切ってる。



帰ってきた時から何処か様子がおかしいなとは思った。

重そうに荷物を抱え込んで入り、ドサッと廊下の端に置いた。




「ふぅ…」


大きく息を吐きだした。


「おかえり。えらく重そうだな」


いつもと同じように声をかけたつもりだったのに、カツラは鋭い視線を俺に向けた。


「重いってもんじゃなかったわよ。指がちぎれそうだった」


ムッとしているような声のトーンで言い切り、乱暴に靴を脱いで上がった。


「今夜は酢豚です。できたら呼ぶから」


丁寧なのは言葉ヅラだけ。

本人の顔はぶすっとしていて、愛想も何もありゃしない。


「ツマミはチーズちくわとキムチでいい!?」


「い、いいけど……」


(怖ぇぇ。何があったんだよ。一体……)


聞くのも憚られるような雰囲気に尻込んだ。

カツラはスーパーの買い出し分だけ奥へと持って行き、自分の通勤バッグは部屋の中へと押し込んだ。


「何!?そんな所に突っ立って」


唖然として様子を見ていた俺に声をかける。

その表情は初対面の日と同じくらいに険しかった。



「あ……いや、別に……」


お前の様子がおかしいから眺めていたなんて、冗談でも言える雰囲気ではない。

ピクリと眉を引き上げて、物も言わずに部屋に入りドアを閉めた。

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