未熟女でも大人になっていいですか?
「何だよ。あの態度」


初めて一緒に暮らしだした頃の感じに似ている。


人を寄せ付けない。

正確に言うなら男を寄せ付けようとしない雰囲気に。



部屋から出てきたカツラはキッチンに置いてあるエプロンを身に付けた。


エプロン姿のカツラは可愛い。

柔らかな人柄が表に出て、いかにも旨いものを作りそうな気がする。


だけど、今日は側に寄らせて貰える雰囲気は微塵もない。


包丁を握っている手元が怖い。

本人が恐ろしいくらいの仏頂面で料理を作っているせいだ。




「はぁ……」


時折、息を思いきり吐いてる。

肩の力を抜いて、全身が凝り固まるのを防ぐみたいに。



(緊張してるのか?)


夜が近づくから?

ひょっとして、やっぱり昨夜のことを気にしてる!?


(今夜は迫ったら怖そうだな。触らぬ神に祟りなしって諺もあるし、止めといた方がいいのかも……)


取り敢えず、夕飯食いながら話を聞こう。

何を話しだしても黙って耳を傾けるんだ。



(なぁ棟梁。そうすればいいって教えてくれたよな……)


懐かしい人のことを思い浮かべた。

俺が一番荒れてた時期に、人一倍世話になった恩師。



その人からいろんな事を教わった。

仕事の面白さも人付き合いの仕方も、それから自分が一番ガキだ…ってことも。



(今頃、何処で仕事してるんだろ…)


風来坊だと言っていた。

仕事がある場所を転々として生活している。


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